街路樹はすっかり葉を落とし、ビルの谷間の路地奥では落ち葉が空っ風に吹かれている。外食ばかりじゃと思い、久しぶりに作ってみた弁当はほぼ一面茶色。そんなブラウン弁当を持って、グレーのスーツで通うのはブラック企業。自分ではおしゃれだと思っているモノトーンでまとめたワンルームのマンションへは、いつからか寝に帰るだけの毎日。
そうか。足りないのだ。
私には色が足りないのだ。
シンプルな暮らしもいいけれど、いま必要なものはきっと「彩り」だ。
コントラスト・マジック。
私の実家は街の酒屋。
幼い頃、敷地の隅の蔵で陽が当たる白い壁を見上げている時間が好きだった。そのせいか白い壁は私の中では幸せの象徴であり、部屋を借りる時の優先事項はいつも「白くて広いリビング」だったのだけど、リビングにモノを置きたくない結果、ほかの部屋がごちゃごちゃになってしまうのが常であった。そこで、しまい込んでいたビアーマグコレクションをあえて飾ってみたら、アラ素敵。しかも白い壁に黒い棚でスッキリ視覚効果。
部屋に願いを。
「子供部屋」と聞いて思い浮かべる風景は人それぞれ。でもきっと皆に共通している事は散らかっているイメージでしょう。それならばこんなお部屋はいかが?壁を飾るアルファベットは、落書きや多少の散らかりすらアートに映します。ブルーの鮮やかな壁面は見た目おしゃれなだけではなく、お子様の気持ちを安らげる効果を狙いました。おしゃれ→お子様落ち着く→散らからない→親御さんのイライラも減少…なんて想像はちょっと都合よく考え過ぎですかね。
パリのアパートメント。
パリに行った事は無い。
そもそも私はパスポートを持っていない。けれどもイメージする事は出来るよ。目を閉じて心の中のエッフェル塔に登ってシャンゼリゼ通りから凱旋門を飛びこせば、キッチンからポトフのいい匂いのするアパートメントが脳内にボンジュール。…思い切った配色の壁。週末にはワイン片手にホームパーティー…たとえ買い物袋から飛び出しているのがバケットじゃなくて長ネギでも、気分はパリジャン・パリジェンヌ。
赤いソファがアクセント。
買い替えを機に、今までだったらまず選ばない色にしたかった。私は清水の舞台からダイブする覚悟で大勝負に打って出た。人生を変えたかったのかも知れない。「そんな大袈裟な」と思うだろう。これといったポリシーもない、ええ別に地味で結構ですよな学校指定ジャージ人生を歩んできた私にとっては、きっと遅れてきた自我の目覚めなのだ。結果は大正解!部屋に温かさと面白味が加わった。紅一点、砂漠のオアシス。ユアマイサンシャイン。
ウキウキが飛び出す。
週末に久しぶりに会わないかという遠方の友人からのメール。この土日はキッチンのタイル貼りをすると決めていた。頭に巻く手ぬぐいだって、お気に入りに新調するくらいには職人モードになっているのだ。ううむと考えた結果、友人も一緒にタイルを貼る事に。それでも結局2日がかりとなったけれど、明るくなって満足のいく仕上がりに。腕組みした友人が眺めながら、「これ赤と青のメガネかけたら飛び出すんじゃね?」
3Dキッチンか。いいじゃないか。
関連まめ知識
関連Q&A
ライター/writer kotoda