2010年に発行された『頭のよい子が育つ家 (文春文庫)』四十万靖・渡邊 朗子(著)という本は、当時建築関係者の間に少なからずセンセーションを巻き起こしました。それまで当たり前に作られていた子供部屋の概念が覆された感覚でした。もちろん家の造りだけで子供が優秀になるわけではありませんが、この本は戦後訪れた“裕福な”時代の負の産物である家族間の隔たりにも一石を投じる内容でした。以降、子供たちの勉強する空間はどのように変わったのでしょうか。
家全体の気配を感じながら
最近、ワークスペースが作られる場所として人気があるのが、階段を昇りきったホール部分です。そこに長いカウンターを配して、パソコンができる環境を設置すれば、家族皆が使える作業場になります。吹き抜けに面していれば、そこから家全体の様子を窺うこともできます。ダイニングテーブルで勉強するほどお母さんの側に居たいわけでなく、かと言って、やっぱり気配は感じていたいというちょっとわがままな甘えん坊さんにぴったりの場所です。
季節の移ろいにも目を向けて
写真は公園隣りの家。自然を感じながら勉強できるなんて、なんて贅沢なロケーションでしょう。人は疲れた時に緑色を見ると心と頭をクールダウンできるそうです。それが本物の緑ならなおさらです。春の若葉、夏の新緑、秋の枯葉、冬の雪、沈んでいく太陽、満点の星…時には吹き付ける雨風も、そんな季節の移ろいや気候の変化を体感できる窓をぜひワークスペースに配してください。美しい日本の四季を、感受性豊かな子供の心に焼き付けてあげてください。
大好きなお母さんの気配を感じつつ
ダイニングテーブルで勉強するのも良いけれど、食事の時間ごとに追いやられるのが玉に瑕。気がつけばテーブルの上は消しゴムのカスだらけになっていたりすることも。ダイニングのそばにお母さんのワークスペースがあれば、いつでもお母さんにわがまま言いながら勉強できます。仲良し親子も常に見られている状態では時々疲れるかも。少しでも気配を消すことができれば、子供もちょっと息抜きしたり、お母さんもつまみ食いをしたりすることができますね。
図書館みたいな空間で
家族全員が使えるワークスペース。背後には壁一面の本棚。まるで図書館みたいなイメージで集中力も自然とアップします。レイアウトは階段上のワークスペースと同じような感じですが、こちらはひとつの部屋として独立しています。そうすることで冷暖房の効き目は各段に違います。この部屋で時にはお父さんに勉強を教えてもらいながら、気分転換に親子でパソコンゲームなどしても楽しいのではないでしょうか。
シンプルゆえに集中できる
独立した子供部屋としても使え、閉塞感のないこんな造りの勉強スペースはいかがでしょうか。無垢の木を多用したお部屋は構造部がそのまま見え、窓も大きくなんとも開放的です。また、無垢材の癒し効果により、落ち着いた気持ちで勉強することができます。兄弟姉妹が並んで勉強すると切磋琢磨しあえそうですね。何もかもシンプルな造りなので、子供が独立した後に親が他の用途で使うことも容易です。
意外と落ち着く場所
階段下のスペースは、通常収納やトイレに使用されることが多いのですが、このようにデスクとイスを置くと簡易のワークスペースがあっという間に出来上がります。階段の勾配が屋根裏のような佇まいを感じさせ、思いの外落ち着いた雰囲気になります。階段がリビング内にあれば、家族の気配を感じながら作業できますが、廊下と直結している階段ならほどほどに静寂感もあり集中力も増します。写真のような配色にすれば、階段下とは思えないクールな印象になります。
圧迫感がない居心地の良さ
本がたくさんあると自然と勉強したくなるのが人の常?で、こんなスペースはどうでしょう。家族皆の本を収納できる場所ですが、本棚が高くないので圧迫感がありません。小さな子にも本が取り出しやすく、勉強に疲れた時には、お茶しながらお気に入りの雑誌をパラパラめくればカフェ気分です。地震の多い地域ならいざという時に危なくないこの程度の高さの本棚がおススメです。本もデジタル化されてきたこれからは、こんなコンパクトな本棚が主流になるかもしれませんね。
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ライター/writer さんたまる