心静かに過ごせる空間。それは、何物にも代えがたい、尊い時間。

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寒くなってきたので、とうとうストーブをつけました。天板に鍋を置き、お汁粉を仕込んでいます。お汁粉がクツクツと煮込まれる中、1人ボケーッとストーブの暖にあたりながら、1人の時間って大切だよなぁと、しみじみ思ったりしています。
1人の時間を過ごしている間、我々は、必ず何かを想っています。その何かは、その人にとって、とても大切な何かです。1人静かに、大切な何かを想う時間。それは、とても尊い時間です。
どんなに寒くても、海岸へ散歩に出かけます。そして、帰り道、1人ボケーッと大海原を眺めている近所のじいじに出くわします。たそがれる背中をうっかり見られてしまったじいじは言います。「なんだオメー、独りで散歩かよ!寂しいな、オイ!」明日もじいじに会えるといいなと思います。

究極の1人の時間@お風呂。

我々は、熱々のお風呂に全身浸かると、「あぅ~」や「ふぃ~」等、言葉にならない言語を発します。そして、銭湯や温泉に行けば、赤の他人の「あぅー」や「ふぃー」を聞くことが可能です。熱々のお風呂で赤の他人の「あぅー」や「ふぃー」を聞いたからと言って、特別な何かが起きることはありません。しかし、通勤電車の中で、「あぅー」や「ふぃー」を聞いたなら、「あらっ?私、この人の足ふんじゃったかしら?」と、まずは赤の他人との関連性を疑うでしょう。つまり、熱々のお風呂は、個人が個人でいられる場所なのだということです。『あいつは書斎を持っているらしいぞ、うらやましいな、1人になれる空間があるなんて…』と誰かを羨む方たちは、全く気づいていないのです。自宅にお風呂があるその素晴らしさを。私が住まうシェアハウスには、お風呂があります。すきま風吹きすさぶ、冷やかな脱衣所と、昭和なデザインのタイルの床が、冷やかすぎるお風呂です。21時頃、住民の多くは、出かけていきます。もらい風呂をしに、ご近所もしくは実家へと。

一期一会。余情残心。己と向き合う茶の湯の精神。

ションボリする時があります。しかし、そのションボリは、誰のせいでもありません。最終電車に乗り遅れたのは、お酒のせいではありません。駅員さんのせいでもありません。己の理性が足りなかった、ただそれだけです。そこで、玄関わきには茶室です。玄関でぬいだ靴を揃えるという、たった1つの礼節さえも、どこかへ置き去りにしてしまう空疎な夜は、茶室に直行。心を静め、今夜己が何をしたか、何をしなかったのか、猛省します。茶の湯というフィルターに己を通し、己を見つめ、武士の大和魂を呼び起こします。正座で痺れた脚もまた、誰のせいでもありません。

大人のゆりかご、ハンモック。包まれ、揺られ、日々の疲れが癒されます。

ポカポカとした小春日和の中、ハンモックに包まれながら、ユアーンユヨーンユヤユヨーンと揺られていると、昨夜の深夜割増のタクシー代が昼食何回分だったのか、どうでもよくなります。午後三時頃、庭先から、妹と母の会話が聞こえてきます。「ねぇー、お母さんー、お姉ちゃんまだハンモックだよー」「お姉ちゃんはね、日頃の通勤電車の揺れだけじゃ物足りなくて、休みの日はああやって思う存分揺れていたいのよ。だからあんたも我慢しなさい。」

夜の屋上で味わえる、真冬の静謐、真冬の情緒。

流星群を見るために、里山の頂上へと車を走らせました。目的地に着き、車を降りると、儚くも力強い一瞬の煌めきたちが、真冬の夜空を覆いつくしておりました。1人心静かに流星群を追いかけていましたが、帰りの車は心荒々しくトイレを目指し、猛スピードで里山を駆け抜けました。真冬の情緒は、自宅の屋上がベストです。
小説を読んでいると、こんなシチュエーションがよく出てきます。
「高校卒業→上京→都会の喧騒に疲れる→都落ち→実家に戻る→子供部屋は家を出ていった当時のまま」。この“子供部屋は家を出ていった当時のまま”という状況は、子を思う親心を表しているわけですね。親心ということで、思い出すのが実家の父。
父は、若いころから山男。立派に仕事を勤め上げ、定年退職を迎えた頃には、子供たちは巣立っていました。60歳の彼は、第二の人生を謳歌します。通勤の代わりに、イソイソと山へ通い始めたのです。元々、父は、若いころから使っていた山の道具を、自分専用の書斎に収めていました。
しかし、第二の人生を謳歌し始めると、山の道具が増えていき、ついに彼の書斎はキャパオーバー。建て替えを検討する父。そして、1年の間に数回しか帰省しない子供たちに、指令が下されます。『実家の私物を処分せよ』。
子供たちは、泣く泣く思い出の詰まった書籍や靴を処分します。父は、『Don’t look back!』と子供たちを励まします。そうして、子供たちの私物がなくなった子供部屋に、数ヶ月後、訪れてみると、書籍「山と渓谷」のバックナンバーが山高く積み上げられ、文字通り、山と渓谷を作り上げている他、「山と渓谷」を読みながら、まったりとコーヒーが飲めるよう、ちょっとしたカフェコーナーが設えてありました。コーヒーを淹れる道具はもちろん山仕様のコッヘル&ガスバーナー。
書斎を二つ持った山男の妻が、しばらくして、『畑やりたい』と言い出し、ついに家は建て替えられます。広々と生まれ変わった山男の書斎と、その妻の広々とした畑が目にもまぶしい新築の家には、子供部屋に該当する空間が皆無だったのでした。

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ライター/writer koagari