長く閉ざされた厳しい冬を家で過ごす北欧・デンマークの人たち。彼らが求める灯りは、私たち日本人が考える室内照明とはまったく異なるのかもしれません。真昼のような明るい光ではなく、夕暮れのようなあたたかい光。けっして室内を均一に明るくすることはなくーー。
ここでは、デンマークの照明を取り入れた実例を4つ紹介します。これらの照明について知ることで、これからの照明計画を違った角度から考えられるかもしれません。
デンマークの照明の代名詞、「PH」ランプ
白い天井と壁、そして木の食卓の上に吊るされた白いペンダント。Simple is the best.(シンプル・イズ・ザ・ベスト)そのものです。
照明は、デザイナー・ポール・ヘニングセンによる日本でも根強い人気の「PH」シリーズのひとつ。
まぶしい光源が目に入らないようにデザインされたシェードからは明るすぎず、暗すぎず、心が和む絶妙な光が灯されます。
上下に広がる、緩やかで存在感のある光
Pakhus(パークフース=倉庫)という名のこの照明は、古い倉庫を改築した際、建物の天井面を照らす効果を得るために、デザインされたもの。
電球の光源を囲ったリングは、水平方向の光をカットし、上下への配光は緩やかに、かつ、きらめきを保ちながら光を放ちます。
この実例のように、キッチンカウンターやダイニングテーブルの大きさに合わせて数を追加することで、場の雰囲気を効果的に演出します。
造形美あふれる、オブジェのようなあかり
赤とグレーのダイニングチェアと、木のテーブル。高い天井からはポール・クリスチャンセンのペンダントが下がり、まるで北欧のような洗練されたモダンな空間です。
この照明は、1943年に創業した歴史あるレ・クリント社の代表作のひとつ。1枚のプラスチックシートを手で折り上げたハンドメイドで、灯すと美しい陰影を描き、さながら芸術作品のよう。空間に、独創的なあたたかい光をもたらします。
主張しない、シンプルなかたち
一瞬、どこに照明があるかわからないほど空間に溶け込んでいます。このように、灯さない日中、照明器具は主張しないで静かに佇むのが理想です。
天井から下がる乳白色ガラスの小さなペンダントは、ポール・ヘニングセンがデザインした照明をモチーフに製品化した、ルイスポールセン社のロングセラーです。シェードは三層吹きガラス、内側はフロスト加工され、灯すとやわらかな光に包まれます。
関連まめ知識
関連Q&A
ライター/writer 西岡